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こんにちは、サロン経営ラボRefineの井上です。
今回は、「サロン経営ノート(分析編)ーデータ分析をどう活用できるかー」、「サロン経営ノート(経営戦略編)ー中小企業の負けないための戦い方ー」に続いて経営ノートのロジカルシンキング編です。
ロジカルシンキングについては、多くのビジネス書で紹介されていたりしますので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
そのようなロジカルシンキングをはじめとした論理的思考は、経営的意思決定を支える重要なスキル・考え方です。
特に経営では感情に流されない判断力が求められますので、しっかりと身につけておきたいですね。
この記事では、そのようなハウツー的なビジネスでの活用について書きつつ、さらに自分なりに一歩踏み込んで論理思考について考えていければと思っています。(このような理由から「論理的思考を深める」という副題を付けました。)
はじめに
論理とは何か
仕事も私生活も含め、日々生活している中で、「あなたの話(または文章)は論理的だね」というフレーズを言ったり言われたりした経験が誰しもあると思います。
例えば、誰かが提案をしたとき、その提案がなんとなく分かりやすかったり、説得力があると感じる時に、私たちはそれを「論理的」と感じますよね。逆に、主張が曖昧だったり、結論が飛躍していると感じた場合、論理的ではないと判断するでしょう。
しかし、さらに踏み込んで「論理的とはなんだ?」、「どうやってその話(まやは文章)が論理的だと判断したのか?」と問うた時に、自信をもって明確に答えられる人は少ないかもしれません。
では、まずそもそも「論理」とはなんでしょうか?
広辞苑によると、
「論理」とは、「議論・思考・推理などを進めていく筋道。思考の法則・形式。論証の仕方」と説明されています。
つまり、上記を加味するならば、「論理的」とは「物事の順を追い筋道立てて考えること」を指していると考えられます。
私たちが日頃「論理的だなぁ」と感じる話し方は、意識的にも無意識的にも、順を追って整理されており、筋道が立っている文章、になっているのでしょうね。
ところで、「論理学」や「言語哲学」という学問をご存知でしょうか。
「論理学」や「言語哲学」は、まさに「論理的であること」が何を意味するのかを探求する学問です。
論理学について
論理学は、物事をどのように推論し、結論に到達するか、その過程を体系的に研究する学問です。
そしてそれは、推論のルールや構造を明確に定義し、議論が一貫しているかどうかを判断する手助けをします。
例えば、「すべての人間は死ぬ。ソクラテスは人間である。したがって、ソクラテスは死ぬ。」という三段論法のように、前提から結論が必然的に導かれるような議論を正当(妥当)と見なします。
論理学には大きく分けて2つの側面があります。それは形式論理と非形式論理です。
• 形式論理:論理的推論が厳密にルールや構造に従って行われるべきであるという考えに基づいており、数学的な証明やプログラミングのアルゴリズムなどで使われるような、厳密な推論の体系がこれに該当します。
• 非形式論理:日常会話や文章の中で使われる論理には、必ずしも上記のような形式的な構造は求められません。しかし、それでもなお議論が一貫しているかどうかを判断するための基準はあります。例えば、前提と結論のつながりが明確であるか、結論が過剰な一般化をしていないか、といった点です。
先ほどは広辞苑での「論理」という言葉の定義を紹介しましたが、今度は論理学で「論理的な文章」がどのよな要素によって判断されるかを簡単に紹介します。
論理学における「論理的であること」の定義要素
1. 一貫性(Consistency): 矛盾がないこと。
2. 妥当性(Validity): 前提が真であれば結論も真であることが保証される推論。
3. 正当性(Soundness): 妥当であり、かつ前提が実際に真であること。
4. 推論規則への従順性:論理学の形式的な規則に従った推論であること。
5. 明確性と構造的整合性:論理的な構造が整い、曖昧さがないこと。
これらが代表的な要素として挙げられます。
論理学については以下で基本的な部分に踏み込んでいきますので、ここではこの説明にとどめたいと思います。
言語哲学について
言語哲学は、「論理」と「言語」との関係を探る学問です。具体的には、私たちが言葉を通じてどのように意味を伝え、理解し合うのかを研究します。
言語哲学では、以下のような問いを重要視しています。
• 言葉が指し示す対象(例えば、「机」や「空」)とその意味は、どのように関連しているのか?
• 「真実」とは何か? 言葉を通じて真実をどう表現し、伝えるのか?
• 私たちは、言葉を使ってどのように推論し、結論に到達するのか?
上記の通り言語哲学はあくまで「哲学」ですので、この記事のように実際に道具としてビジネスでの活用を目指すのであれば、論理学の方が趣旨に合っていると考えられます。(そのためこの記事では言語哲学には触れません。)
そして、そのような論理学のビジネスでの活用を目指しているのが、ビジネス領域でよく言われる「ロジカル・シンキング」や「クリティカル・シンキング」などです。
これらはコンサルタントや学者をはじめとした様々な人々により、フレームワークとしてツール化が図られており、実践で活用されています。どのフレームワークでも土台としているのは論理学です。
この記事では、「しっかりと論理学を土台として考えた上で」そのような実践での活用を私なりに考えてみたいと思います。
ここから先は、
1・ベージックな推論手法(帰納法、演繹法、アブダクション)の紹介
2・それらをビジネスでどう活用するか(ロジカルシンキング、クリティカルシンキング等)
3・論理的に妥当な文章の検証(論理学の初歩的なツールを使用)
という流れで触れていきたいと思います。
推論手法
推論とは何か
「推論」とは、既知の情報や前提から新たな結論を導き出す思考プロセスです。
私たちは日常生活やビジネスにおいて、直面する問題や課題を解決するために、推論を無意識のうちに活用していることが多々あります。推論は論理的思考の代表であり、情報を整理し、矛盾のない形で結論に導くための有用な技術です。
ビジネスにおいては感情が入り込み適切な判断力を欠くことも多々あります。私自身、自社を経営する中で「冷静に考えたらわかるはずなのに、なぜあのような意思決定をしてしまったのか」などと反省することが何度もありました。
もちろんこのような経営上の意思決定に際しても、直感でなんとなく決定したことが結果的に正しい時もあります。
ですが、その判断過程には再現性がなく、次の違う状況に対応できるとは限りません。
論理的に筋が通った方法で考えるスキルを身につけることは、それが根拠のある判断の一つの選択肢になり得るだけでなく、多くの問題に対して再現性のある思考を行う助けにもなり、経営でも有用です。
「ロジカル馬鹿」にならない
ここで確認しておきたいのは、私は「論理的思考が完璧であり、ビジネスで成功するためにはそれだけで判断すればいい」、と言いたいわけではありません。
何事も過度であることはよくないので、ロジカル馬鹿になることもおすすめはしません。
ビジネスでは、論理的(サイエンス)であることに対して、それとは反対の感性的な意味合いとして「直感」や「アート」という言葉が使用されることが多いですが、これらも経営する上で必要です。
右脳(直感)と左脳(論理)で分けられることもありますよね。
私は、これらのどちらも経営をする上では必要であり、場面での適切な使い分けが重要であると考えています。
例えば感性的な部分ですが、これは発想力に関連するアーティスティックな部分ですので、ブレストなどでアイデアを発案したり、施策を発案したりする際に必要なものですね。
そして論理的な部分ですが、これは物事を整理して正しく理解するためのツールですので、過去に原因を探ったり、現状を分析したり、感性的に発案したものを構造的に整えたりするために使用するものであると考えます。
つまり、過去、現在、(直感による)アイデア、などの確定した事象を整えて解釈することが論理思考の役割であると言えます。
このように論理思考により事実(ファクト)を正しく認識することは、ビジネスにおいてとても重要なことです。
以下の図に示します。

論理的思考にはこのような役割があるわけですが、それを支える手法が「推論法」です。
推論法にはいくつかの種類があり、代表的なものとして「演繹、帰納、アブダクション」の3つが挙げられます。それぞれ解説します。
帰納、演繹、アブダクション
演繹推論(Deductive Reasoning)
演繹推論は、一般的なルールや原則から特定の結論を導き出すプロセスです。
前提が真である限り、結論も必ず真であるとされる形式です。
例えば、「すべての人は死ぬ」という一般的な前提から、「ソクラテスは人である、したがってソクラテスは死ぬ」という結論が導かれます。この前提が、下図における法則にあたります。
<経営活用例>
演繹推論は、既存のルールや原則を適用して、特定の問題に対する結論を導く際に使用されます。例えば、過去のデータから導き出されたマーケティング原則を新たなキャンペーンに適用することで、その成功確率を予測することなどがそれです。

帰納推論(Inductive Reasoning)
帰納推論は、特定の事例や観察結果から一般的な結論を導き出すプロセスです。
帰納推論は確率的な推論であり、結論が真である可能性は高いが、必ずしも確実ではないという特性があります。
例えば、「毎日この場所にコーヒーを買いに来る人がいる」という観察から、「この場所はコーヒーを飲むのに人気がある場所だ」という結論が導かれます。ここで言う結論が、下図における法則に該当します。
<経営活用例>
帰納推論は、「過去の事業の観察データを基にして、特定の共通性を見出す」、などのようにしてビジネスにおいて用いられます。

アブダクション(Abductive Reasoning)
アブダクションは、最も可能性の高い説明を選び出すプロセスです。
これは、観察された事実に対して最も簡潔で説得力のある仮説を立てる方法です。
例えば、「床が濡れている」という事実から「雨が降ったに違いない」という結論を導くことがアブダクションです。ここで言う結論が、下図における仮説に該当します。
<経営活用例>
例えば、「顧客の行動パターンから、顧客がどのようなニーズを持っているのかを推測し、そのニーズに応える新商品を開発する」などのように、ビジネスシーンでかなり馴染みのある推論ではないでしょうか。

ちなみに、それぞれの手法の英語名についている「Reasoning」は「Inference」に置き換えることも可能です。
特に両者で違いはないのですが、簡単に言えば前者は先ほどの図で言うところの“過去方向の推論”であり、後者は“未来方向の推論”と言えるのではないかと思います。
そして、上記の各推論法と、それらを検証するための実証分析をひとまとめに「論理思考ツール」とし、下図に示します。
また、図中では「法則」や「事象」等の言葉をビジネスシーンに合うように置き換えましたので、イメージが湧きやすいと思います。
(図の演繹法の「理論適用の前提条件」という部分については、こちらの記事で解説していますのでご覧ください。)

※アブダクションは「リトロダクション」とも呼ばれます。詳しくは(米盛裕二(2007))をご覧ください。
ベーシックな推論手法を取り入れた論理的経営サイクル
実際のビジネスで上記の推論手法を用いるには、各手法の役割を把握し、段階的に事業活動に組み込む必要があります。
ところで、ビジネスシーンでの帰納法には、「多数の企業や経営データを分析して経営理論を導出すること」などが該当すると思いますが、これは自分が研究者などでない限り、学者等の得意分野の方々に任せてしまうのがいいのでは、と私は考えています。
そうなると「データ分析は何のために用いるのか?」という疑問がわいてきますが、それは上記以外の「事象同士の関係性の把握や共通性の発見」、「予測や分類」、「検証や実証」など、過去・現在・未来のあらゆる物事の様々な角度での分析に使用できます。学者に任せた方がいいというのはあくまで、日常的なビジネス活動の中で「理論」と言えるようなしっかりとしたものを見出すのは難しいから、実践にリソースを割こう、ということであり、分析そのものを否定しているわけではありません。(こちらの記事で述べているように、むしろ積極的に活用すべきです)
そして、事業活動の中で立てた仮説をもとに、その事象に対して演繹的に経営理論などを当てはめる、その仮説立案や事後の実証の過程でデータ分析を活用する、これが私の考える論理的な事業活動サイクルです。(下図参照)

私は図にあるように、各推論法を連携させながら、結果として得られたデータ等を用いて効果や因果を検証し、企業の歴史として積み重ねていくことが大切であると考えています。
逆を言うと、「仮説なしでとりあえず有名な経営理論を使う」、「施策をやったらやりっぱなし」、「そもそも理論のインプットが足りず適用場面が見出せない」、などの状況は、企業の歴史を積み重ねていないと言うことになり、たとえ現状事業がうまくいっていたとしても、何かの拍子で一度歯車が噛み合わなくなると土台がボロボロなので、足元から企業が一気に崩壊していってしまうので、上記のサイクルを回すことはとても大切でしょう。
この辺の経営理論等の活用の話は、「美容室経営ノート(経営戦略編)ー中小企業の負けないための戦い方ー」にも記載しております。
(次ページへ続く)
